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コラム:Column

2023.04.25#10 革製品の価格(材料費について)

私が日本全国の文具専門店さん、百貨店さんの店頭販売やイベントに参加していると

「革製品の価格ってどうやって決まるのかな?」
「革製品の価格について、同じような革なのに販売価格が大きく違うのはなぜ?」

というご質問をいただくことが多く、今回のコラムでは革製品の価格が一般的にどのように決定されるかという皆様の素朴な疑問にお応えしようと思います。ここでは価格決定に至る主なポイントを大きく三つの要素に分けてご説明させていただきます。

革製品の価格を決める三大要素

「材料費(商品の材料全般・箱・アッセンブル代含む)」

「工賃(職人・工場などで製作にかかわるコスト)」

「大人の事情」

革製品の価格には上記の三つの要素が大きく関わりますが、今回のコラムではまず「材料費」について掘り下げていきたいと思います。
材料費の大半を占めるのは、その革製品の看板となるメインの表の皮革素材です。また皮革素材にはさまざまな仕上げ方法があり、それぞれの仕上げの特性により商品の価格は大きく変わってまいります。
まず第一に「皮革素材の価格」が「商品の価格」の差に直結することは当然ことですが、その他に以下のことが価格に大きく影響いたします。

「皮革の大きさ」一般的な皮革はデシ(ds=10㎝×10㎝)という単位で取引されます。
「取り都合」一枚の皮革からいくつの商品を作成できるか。
「ロス率」皮革の中で、使用できない捨ててしまう割合。

これらの中で「取り都合」と「ロス率」を取り上げたいと思います。
まずは取り都合の良い皮革、悪い皮革にはどのような素材があるのか紹介いたします。

取り都合の良い皮革

取り都合の良い皮革とは「顔料仕上げ」「型押し仕上げ」「ウレタンコーティング仕上げ」など、表面に何らかの強いコーティングや加工を施した皮革です。
取り都合の良い皮革は、型押しやコーティングにより元々皮革素材がもつトラという文様や毛穴、生前の傷などを消すことができ、皮革表面の状態が均一化するため、余すところなく皮革を使用することができます。
皮革の価格が同じものであれば、当然取り都合の良い素材の方が販売価格は安く設定できます。また前述しましたロス率についても、取り都合の良いものの方がロス率は低くなり、無駄なく商品を作成することができる為、販売価格も安くできます。

メリット
無駄なく商品が取れ、商品価格が比較的安価です。カラフルな色が多く、傷がつきづらい素材が多いです。

デメリット
コーティングなどの劣化は避けられず、皮革についた傷は馴染みません。いわゆる「経年変化」ではなく「経年劣化」の状態になることが多いです。

取り都合の悪い皮革

取り都合の悪い皮革とは「染料仕上げ」や「ヌメ革」のような皮革の本来の風合いをそのまま残した皮革です。
取り都合の悪い皮革は、表面の風合いがそのまま出てしまい、傷などの部分を避けて商品の型抜きを行うため商品に使用できない部位が多く、前述のロス率が高く、販売価格が高くなる傾向があります。

メリット
皮革本来の風合いを楽しむことができ、傷などがついてもよく馴染むため、みすぼらしくなりづらいです。いわゆる「経年変化」としてエイジングを楽しみたい方には最適です。商品によって、同じ個体が存在せず、オンリーワンのご愛用品になります。

デメリット
必ず傷はつきます。カラフルな染上げが難しく、染色についても、皮革の状態についても同じ個体がなく、均一な仕上がりは不可能です。皮革の表面の状態が隠せないため、捨てる場所が多く商品価格が高くなってしまう傾向にあります。

メーカーによる価格の違い

皮革素材と価格の件で、皆様からよくお聞きすることがもう一つあります。

「同じ素材なのにメーカーが違うだけで、なぜ価格が大きく異なるの?」
「ワールドブランドであるならば、何となく分かるのですが、なぜ同じ日本のメーカーで値段が大きく異なるの?」

というご意見をいただきます。その疑問を解決する要因として考えられることを、最後にひとつだけお答えします。

革小物のみを作成するいわゆる「アパレルメーカー」とシステム手帳やノートカバーなどを作成する「文房具メーカー」が存在いたしますが、これらの二つを比べると「文房具メーカー」の方が比較的に商品価格を安くできる要因は、手帳を作成しているということにあります。ここで手帳を作成することは重要な要素で、手帳を作成するメーカーは自ずと革素材を多く必要とします。そのために大量に皮革の仕入れのできる「文房具メーカー」は皮革の仕入れ価格に対し、大きなアドバンテージがあるといわれています。ただし手帳のような真四角の商品は革製品にとって最も無駄が多く、手帳だけを作成してしまった場合には、とんでもなく価格が高騰してしまいます。そのため通常「文房具メーカー」は革小物(財布・小銭入れ・名刺ケース等)を同時に作成することで、無駄なく皮革素材を使用しコストを落とします。その点がメーカー間の価格の違いに反映している一つの原因となっているのではないかと思われます。

このように商品の販売価格の決定についてはさまざまな要因がございます。

今回は、お客様からの革製品の価格に関する素朴な疑問に、私の経験から推察される内容の一部をお応えしましたが、今後「工賃」や「大人の事情」まで掘り下げることができれば…何て事を考えてます。

このコラムの担当は

ブレイリオ 営業部長
大林 里司
ブレイリオ入社より営業一筋。北は北海道から南は沖縄まで日本全国の有名文具専門店、有名百貨店のイベントに参加しています。ブレイリオの事なら何でもお答えいたしますので、ぜひお声をおかけください。

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