ブレイリオ(Brelio)

コラム:Column

2021.05.25#1 レーデルオガワのコードバン

こんにちは、ブレイリオの大林です。

レーデルオガワ社の「コードバン」といえば、世界屈指の技術によってその品質の高さは世界中の愛好家にも知られていますが、こちらの「レーデルオガワ」と私たち「ブレイリオ」の関係は、レーデルオガワ創業者小川三郎氏が生み出した「アニリン染めコードバン」をブレイリオが「システム手帳」として日本で初めて商品化するなど、創業以来特別な関係を築き続けてきました。

記念すべき第1回目のコラムは、レーデルオガワが生み出す「アニリン染めコードバン」の製作過程をご紹介したいと思います。

工程①脂入れ・伸ばし

まず、コードバンの材料となるアカシア属の樹皮ミモザ100%の「植物性タンニン」で鞣された農耕馬の臀部の革に、レーデルオガワによってブレンドされた「オイル」を浸透させます。この工程は「脂入れ」と呼ばれ、革に強度と柔軟性を持たせるための必要不可欠な作業です。その日の気温や湿度に応じて脂と水分の量を決め、革の厚みや固さを熟練の職人が一枚一枚手で感じながら表面の繊維を整えます。
脂入れの後に、革の銀面側をヘラ状の「スリッカー」という道具で伸ばしていきます。とても単純に見えますがコードバンのもつ特殊繊維は圧力に対してとても敏感であり、革の特性を見極めて余分な脂と水分だけを抜き出すには熟練の技術が必要となります。

工程②自然乾燥

脂入れと伸ばしが終わった革を木の棒に打ちつけて乾かします。ヒーターなど人工的な熱は使わず、風通しの良い場所で1~2日かけて影干しをして、自然の風でゆっくりと乾燥させます。そうすることにより、繊維を痛めることなく革に必要な脂分と水分を残すことができます。
湿度と気温をしっかりと記録・管理しながら乾燥させますが、革の厚みや大きさがすべて異なるため、乾燥させる時間の判断は最終的には乾燥させる職人の感覚に頼ります。
この時点では馬の臀部の革が左右繋がった状態で、一度に数十枚ほど吊るして乾燥させます。ゆらゆらと自然の風で揺らめく姿は、まるで革のカーテンのように圧巻です。

工程③削り(シェービング)

自然乾燥が終わると、「シェービング」という作業にかかります。実はコードバンとは馬の臀部の革すべてを指すわけではありません。「コードバン層」は革の中に埋もれており、削らなければ層の有無や品質などは分からず、使える部分はごく一部しかありません。
シェービングとは、ダイヤモンドの原石から美しく輝く宝石だけを削り出すように、熟練の職人が少しずつコードバンの層を探し出す作業になります。わずか厚さ1ミリという緻密な繊維層を、自らの眼と指先のみで見極めるため、職人には熟練の技と長年の経験が必要となってきます。
ミリ単位の精密さでシェービングを行い、完全にコードバン層が表に現れると、徐々にコードバンにも柔らかさが出てきます。

工程④艶出し(グレージング)

シェービングを終えてコードバン層をしっかりと削り出した革を、「瑪瑙(めのう)」の石がついた「グレージングマシン」で磨きます。この瑪瑙は丸みを帯びていて、革の表面に平滑性や透明性のある光沢を与えるグレージングにふさわしい素材と言えます。
コードバンの輝きの秘密はこの工程におけるコラーゲン繊維の圧縮にあり、一方向に繊維を隙間なく寝かしつける事によって鏡の様な面ができあがります。この作業はレーデルオガワでも一番大事な工程で、特に熟練の職人にのみ許された作業です。このグレージングの工程を終えると、コードバンに驚くような艶が現れます。

工程⑤染色

グレージングを終えると、革に染料を加える工程に入ります。グレージングで磨き上げられた革に職人が一枚一枚染色を行いますが、染色に使われる機材および薬品など染色工程に関わることのすべては企業秘密になっています。
レーデルオガワ創業者「小川三郎」氏が作り上げた、この特殊なアニリン染めによる染色技法は、残念ながら現在は完全に非公開となっております。染色工程の写真もありません。
この染色工程を終えることにより、レーデルオガワの特徴でもある「発色が良く」「透き通るような透明感」を醸し出したコードバンがほぼ完成したということになります。

工程⑥仕上げ

染色工程が終わると、いよいよ最終工程です。染色を終えた革に、特殊なワックスをつけて「バフィングマシン」でしっかり磨き上げます。これらのワックスコーティングと磨きの工程を経て、ついにコードバンの完成となります。磨き上げながら表面を最終チェックし、革の大きさを計算し梱包・出荷となります。
ここまで原皮から仕上げまでに数か月から一年かかります。これらの作業のほとんどは職人の力量が試されるアナログなモノばかりであり、各工程で正解を導くには常に感覚との闘いです。これらの工程は決して効率の良いモノではないかもしれません。しかし、革一枚一枚の素性や状態をていねいに見極め仕上げることで、唯一無二のレーデルオガワ特有の色合いが生まれるのです。

工程⑦完成そして製品へ

私たちブレイリオは、このように長く厳しい工程を経てできあがった貴重なレーデルオガワ社製コードバンを用いて、システム手帳や財布・革小物を製作しています。特に大きな革は、そもそも数が少なく、加えて自然由来のキズやシボを避けて切り分ける必要があるため、非常に希少で、ブレイリオでは特に大事な製品を作る際にのみ使用します。
1997年の創業以来ブレイリオでは、さまざまなこだわりのシリーズをご紹介し続けていますが、そのものづくりの原点にあるものは、看板素材のレーデルオガワ社製のアニリン染めコードバンです。これからも本物の素材を厳選し、それぞれの皮革本来の持つ性質を見極め、その特長を生かした仕上げとデザインを常に研究し続けていきたいと思います。

レーデルオガワについて

有限会社レーデルオガワ
レーデルオガワは、創業1971年のコードバン専門のフィニッシャーです。創業者小川三郎氏により、「水のように透き通り」「宝石のように輝くどこにもないコードバン」を作り出すことに成功し、この門外不出の「アニリン染め」の技法によってコードバンが持つ本来の美しさを、多くの人に提供できるようになりました。2017年、千葉県柏市の現住所に新工場設立。

有限会社レーデルオガワ公式サイト
https://leder.co.jp/

このコラムの担当は

ブレイリオ 営業部長
大林 里司
ブレイリオ入社より営業一筋。北は北海道から南は沖縄まで日本全国の有名文具専門店、有名百貨店のイベントに参加しています。ブレイリオの事なら何でもお答えいたしますので、ぜひお声をおかけください。

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